弱気相場師

 陰謀論と被害妄想の愛好者かも。

「その潮流の決まり文句は、言ってみれば、何ものにも惑わされるな、
となろうか。おのれ自身の感覚のみを信じるべし。手を突っ込んで石
まで掴め! これは魂の暴力的な禁欲運動であって、そこから新しい
方向における強大な魂の高揚が発生した。この高揚がうちに秘めてい
る炎と力とを見誤ってはならない。(中略)
 あらゆる差異にも関わらず、時代をリードするタイプとこの点で
類縁性があるのは、時代をリードする実際家つまり商人と政治家だ。
そもそも資本主義がまた、事実だけを計算すること、自分自身にのみ
頼ること、把捉すること、不動の石材で仕事をすること、そのように
スタンスを決めた人間の自立、そして勤務時間外の荒涼を、魂の基本
姿勢としている。政治に至っては、今日の見解によれば、理想主義の
純然たる敵であり、殆ど理想主義の倒錯である。弱気相場で人間に
投資するもの、リアルな政治家をもって自認するものは、人間の低劣な
部分だけをリアルと見る。すなわち低劣な要素のみを、信頼出来るとみ
なすわけだ、現実政治家は信念に基づくのではなく、常に強制と策略に
基づく。第一次世界大戦中と戦後におぞましい渋面で姿を現したものは、
底を洗えばこの精神に他ならなかった。一国の諸省庁は、利害を共有でき
ない場合に、この精神でもって互いにやり合うのである。抜け目のない商社
マンが同類と交渉するのも、この精神によるのだ。この地獄の最深奥部にある
のはー個々人にはまるで意識されないままだがー逆円錐の頂点のように、
理想主義の無力さへの、悪魔的な軽蔑である。この軽蔑は堕落した者のみ
ならず往々にして我々の時代の最も強力なものに特有のものだ」(R・ムージル
「寄る辺なきヨーロッパ 或いは脇道に逸れ続ける旅」)

 「その潮流」も弱気相場師もなんかイヤですねぇ。
 「理想主義の無力さ」なんて手前勝手に見積もるつもりかしら。