2007-12-01から1ヶ月間の記事一覧

自明なベール

大きな石鹸に長い防水シルクの紐が通っている。石鹸は六角形をして粉っぽいすみれ色、穴の周りだけ油脂に溶かした大粒のラメが光っている。 ワンピースのかたちをした木綿の部屋着。3つのはとめボタンは淡いばら色で、大きな半月型のポケットが左右について…

今年一年

心底ありがとうございました、と言いたい人と、もっとお話したかったです、と言いたい人と、来年はもうちょっとどうにかなるようにしますので、と言いたい人と、色々居るなと思う年末。(作品や著作を通じてしか存じない方を含めて、私にゆっくり考える時間を…

年の瀬

知人複数に連絡しながら、以前使っていた鳩居堂の年賀状を復活させようかと思う(あっさりした印刷がかわいらしい。たまにいい意味で間の抜けている絵があるところも大好き)。しばらく年賀状を書いてなかった。 そんな事を思っている矢先に、つくづく暴力って…

円環

座席の上に小さく折り畳んだ紙が置いてある。開くと丁度真ん中に染み込ませてあるインクは濃い紺色で、まわりに広がる部分は薄い水色をしている。眺めていると絡みあった紙の繊維に入り込んでいるインクの流れが、窓の向こうにある湿った雲の流れと呼応して…

縄の内部像

柔らかい布を細くさいてあみあわせ縄状にしてある。縄の内側には銀のかけらが沢山紛れ込み、突然の風が吹くと布だったころの名残を縄全体に行き渡らせながら鳴る。その音を聴くと形のいい結晶の水晶が部屋の何処に忘れてあったかすぐに思い出す。 縄の内部像…

野生のシクラメン

15日に書いたシクラメンだが、書き方は色々あって、「遺跡の傍に咲く」という のはかなり慎重なつもりだったのだと思う(店先で売られてるもの以外は、地中海 の荒涼としたところが起源の花なので。そういうところも含めて好きな感じだった)。 「意識」とか…

Lime pass (パタンふたつ)

カテゴライズしにくい現象が、人間的な感情とか熱意、重みを伴わずにただ在ることの救い。 寒い通りを歩くときに、一画ライムの匂いと雰囲気に染め上げられて居る箇所があって、心臓の近くで甘い露の滴りと、同時に血の翳りを感じる。果物と同じ形の血の翳り…

カールする

時間とともに移り変わる波の中に、細かくカールした水鳥の羽が並べられ、それぞれの長さの分、自然に書き込まれた名と命がある。けれど生きているとは限らない。羽根は時々揺らいでよその世界を見せるのだが、書き込まれた名が呼ばれても軽い波の気配しかし…

ジルベール?シモンドン

以前から疑問に思っていたのだけれども、何でジルベール?シモンドンという人の翻訳がないのだろう。 身内のから「そんなの関係ねぇ」の用法をちゃんと聞く。 テレビで見たとき、こういう一発芸みたいなのがあるといいなぁと軽い憧憬を抱いたのだが、昔脱いだ…

年末の読書のために

「差異と反復」のなかにある、幼生が社会態のなかで生きられることの難しさ と、神学による自我構成のひび割れを、ベンヤミンと結びつけて読むと(自分なり に)分かりやすい気がする。そういった感触を(ベンヤミンに限らないが)小説 や詩として構成する、…

夢と感覚

ちょっと前の日記に夢と現象、感覚質の事を書いたら評判がよく(?)別に聞いてもいないのに夢について書いてる人が沢山いたので、ちょっと作品篇を書いてみる。 「それは見すぎた夢の悲哀、長く見すぎた夢の、細く開いた隙間から流れる息の流れ。風の吹く3月…