と言いつつ

現地調査。私はやっぱり、日本には膨大な住宅ストックがある、と思う。だからちょっとでもそれがきれいで、内省に向いているところになるといい、と思う(家というより部屋が、ひとつひとつ堅牢な場所だといいな、と感じる。集合住宅がみんなフランスかオーストリアのアパートみたいに、自律した場所の積み重ねなら素敵)。

サフラン色の大きなテントが、曇り空から降ってきたみたいに草地へ被さり、つつましく小さなフリルになったテントの入り口には、出たばかりの月がお盆みたいに水平に隠れている。中には白い馬の仔がいて、たてがみで世界を軽く揺すっている。

手元に何冊かある小説の、時間処理について惹かれていた事を思い出す。例えばビュトールの「時間割」。景色を描き出した短文はいくらでも書けるにしろ、それが時系列に沿って並べられ、物語なり論旨を纏う、というところまで考えてみるには、相応の努力がいる。