アトラクションとイルカ学

 海洋動物のかわいさにすぐ持っていかれる性格のため(以前「笑う」スナメリが
とても好きになった)、ワールドカップの「予言タコ」の話に瞬間的に心が動いて
しまう。http://www.jiji.com/jc/a?g=afp_spo&k=20100710025308a
 こういうしょうもなさを逆手に取っているという意味でも、「コーヴ」の罪は
大きいのかもしれない。(この映画で強調されているのは、感覚的に方向喪失した
まま乱獲に結びつくイルカショーを打ったり、そのための捕獲が主産業になって
いる場所で仕事している人の心証を害しながら映画を撮る人たちの一貫
してアーティフィシャルな心象だ。「水銀」がその反映でしかなかったらSFと
思う。第一、暗視カメラに映し出される撮影部隊の人たちのほうが、発光した
白い光の塊みたいに映し出されていてよっぽど何か含有してそうなのだし)。
 ジョン・C・リリーの言ってることは大呆けのように思えたり、何かの
逃げの系譜として「イルカ学」があるような気がする。「知能が高い」というのは
どう立証されているのか知りたい気がする。(これは切実に。「高次の意識と結び
ついた生命なんだ」と言われても、それはたぶん言いすぎと思う)。

                ♪
 この映画でイルカはほとんどブライアン・ウィルソンみたいな扱いなのだが、それに対してシンパシーを感じることがあっても、やっぱり日本の一漁村の慣習とは関係がないのではないか、と思う。アトラクティヴなものに一貫して憑かれていて、その結果乱獲を招いたり人の心証を害してるのは、徹底して60年代の興行屋だったこの人たちなのだ。この映画を見たところで別段太地町の人たちを悪いとも思わないし(よっぽど乗せられやすい性格でない限り)、バタ臭い悪意みたいなものをしっかり見ておいたほうが、そういうものに糊塗されてるわけでもない日本の海域の質が際立って感じられるような気がする。