当然あるだろうけれども、今まで考えたことがなかった。
行ったことはなくても通りかかったことだけはある「レントゲン藝術研究所」という画廊があり、とっくの昔に
閉まっているのだが、そこで白いダッコちゃんが沢山ぶら下がっている「作品」を展示しているのが「村上隆
というアーティストだ、というのをぼんやり見たことがあった。その後そのひとの作品はオークションでものすごい
高値がついたり、六本木ヒルズ全体にイコンとして配置されていたり、ベルサイユ宮殿での展示をフランスの極右に
攻撃されたりしている、はずなのだが、その実何がおもしろいかあんまり理解できない(が、すごく嫌いで見ているの
が苦痛というわけでもない。だがコンセプトがよく理解できないのだ。六本木ヒルズの壁についてる目のウルウルした
お花とか白い恐竜みたいのは純粋にかわいい感じがするし、オークションで高値のついたフィギュアみたいなものが
何でもてはやされたのかもよく分かる感じがするのだが、アートとしてものすごい好きというのがそこに感覚としてある
のか分からない。
 じゃあ誰なら日本の現代美術家として好きなのか、で、捻りあまりなく斉藤義重、と頭から、何か出てきた(スパッと
した感じで)ジャコメッティが好きなのと同じ意味で好きであり、それはある時期からずっとひとつところにとどまってつくっていた、
とか、そういう意味もあるのだろうと思う(当然戦時中とかそういうときのことは別)斉藤義重が好きなのは、斉藤義重をネタに
して誰かとコミュニケーションしたい、とか、斉藤義重好き同士で申し合わせを作りたい、みたいなさもしい感覚と全く無縁で、
何か目の奥で黒々と考えと世界を切り分けられた、という感覚による。あのときのあれをもう一度見たい、と思っても、今の自分に
そう出来るか解らないというのは怖いことだと思う(何であんなに絵とか作品ばっかり見に行ってたのか、子供小さくても変な美術
展ばっかり見てた身内を、私はやっぱり物差しにしすぎているんだろうなと思う)。