ミニマ・モラリア

身体に機械が反射する
 ドアはそーっと閉められない
 蝶番は 白い鋼で出来ていて
 合わせ目は丸い木の実にそっくりなのに



 閉め出されゆく時間は凍え
 やがて 骨釦のなかの春画になる
 注意深く身体を折り曲げ
 反射する機械のかたちをなぞり



 骨釦が抱えるその機械
 初めはひとつ 折り曲げられ
 そのうちふたつ 重ねあわされ



 それはまだ 釦のある服を着ている
 二番目がその骨釦
 機械の反射する 身体が畳まれ・・・


Lemon-aida

 レモネードの壜にだけ
 憶えられている文法があって
 色んな国語に不似合いだった
 口つけて飲めば流れ込む液状の文法



 レモネードの壜の上にだけ
 飛ぶ虫がいて軽薄だった
 何で見分けてるのか分らない
 涼しさ? 夏にあれば遥かさに似て



 つま先まで泡が詰まっていて
 冷たい色で渦を巻いてて
 意図がなく論理的
 


 流れ込み流れ込んでも
 すこしの時間で苦く溶け去る
 舌のさき Lemon-aida 眼の中の昏い闇

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 ファンタジーだけは湯水のように書ける、という感触。