空想(感慨)

 

「脳内伝達物質と同比重で同じ化学構造の本を書く」
っていう野望がもしあるとすると、それはすごくギャ
グっぽいかもな、という気がする。でも(私は歴史に
詳しくないんだが、多分歴史上何人も)、本気でそう
いうものに取り組む(取り組むと
いうか仕掛け満載にして投げる)人って出てくる。


 私はその本気さが、ネタなのか本当に本気なのか、よく
分んないのだ。その野望の果に何があるかもよく分んない。
 普通の本が楽しく読めなくなるのが困る。

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 これも10年くらい前の書きもの。
「電波系には新たな神経症の要素がある。どうしても超
越的な何かに”選ばれた”感じが拭い去りがたくあるか
らだ。これだけ分裂病的な状態が世間で恒常的になると、
抑圧された実存者が神の声を聴くと
いう事態だけが根強く局所的に起きるのだ。恒常的な革
命状態にある脳に、どんなテクストが対応するのか。現
実をもう一度確実にするため、
処方となるのは古風な唯物論の言葉だけではないのか。

 全くの〈平面〉ー自然状態から”実存的”力が生起し
内向させられるとき、世の中が構造主義的であっても実
存者は存在する。」
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 ある種のオカルトの「根源的しょうむなさ」みたいなものに、
かたをつけたいと思っていたのかもしれない。


「これだけ分裂病的な状態が世間で恒常的になると、抑圧され
た実存者が神の声を聴くという事態だけが根強く局所的に起き
るのだ。恒常的な革命状態にある脳に、どんなテクストが対応するのか。」

 とはいっても90年代後半だと、「神の声を聴いている抑圧された
実存者」は、まだそんなに多くなかった気もするのだけれども、身体情動
にヒビが入るとそういうもんでとりあえず埋め合わせる人は居た(そういう
人は何らかのかたちで、霊感を主張していた)。
 そのうち霊感が絶対化された世界や、何らかの神経症的(諜報的)空回り
のうちで、自己決定を強いられる世界がやってくるんだろうなぁ、と淡々と
思っていた。

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ラマダン・ポート

 港は思い切り
 ふわふわしたのがよく
 そこでなら短い
 ラマダンが過ごせそう

 つまり港を埋める
 柔らかい空気と水で
 全ての食事が事足りそう
 私は石のはまった沓を履く

 石のはまった沓を履く
 霊験あらたかな霊が
 後ろめたそうに運んだ石

 真ん中に青い石英
 周りは堤防
 歩くほどに時に沈む
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 (この詩は区切らない場合、文頭を下にすると城に
見えるかもしれない?)

 ずっとふわふわした港のイメージに取り憑かれている。
 あとは冷戦構造下の緊張が、世界史上の位置関係を変え
 てコンパクトに生き直されること。その中で玩具じみて
 くる出来事の中にある、享楽と苦痛。