心で覚えている場合

 「俺たちの二人の二重の無意識が
  一層 深さを増している この南方の
  浄土につき 百千の花菖蒲の亂れた土地、
  その風景の一望が、確かに存在したのだか

 
  どうかは菖蒲が知っているが、真夏の
  喇叭の金といふ名を持つに相応しくないと、
  われひとも、当然の事柄として、言ふ時に
  時代の権威が混沌とした様相に亂れてゆく。

  
  さうだとも、島の大気が 幻覚では
  なくて視覚を 充満する島の中では
  俺たちが 黙して語り合わないのに
  一切の花は 一層身を広げて大きくなった。
                 (ステファヌ?マラルメ「散文」/鈴木信太郎訳 より)

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 とても好きなフレーズで、思い出す時に、実際の花菖蒲に言葉が付随する。
 それでも同じようには書かれないということ。その事の幅、意識。
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