ピリオド

 小さいピンク色の鈴が二粒、想定された場所の上で鳴っている。それは意志を持っているように見える。
けど想定された場所というのが解らないし、ピンク色の鈴っていうのも何を示しているのか解らない。顔
を近づけてみれば解る。生の代用物。

 最初雲はきれいな面を見せている。強い風が吹く。翻った雲の一面に、銀の糸で深く波の模様が刺繍さ
れている。そのどれをかすめ取ったところで、雲を舞い上げる風の強烈な強さを押しとどめられそうもな
い。風はずっと高いところまで雲を持ち上げそうに吹く。そのうち、気象で覆われている空までもが吹き
飛びそうにも見える。

 暗い緑色のスフで出来たワンピースは、腰がドロップラインになっていて、少し落ちたところに取った襞の
上に柔らかい灰色のシルクで、何列も縫い取りがしてある。その上を欠けていたために値段のつかなかった人
造ルビーでつくった、天道虫のジュエリーを列ねたベルトをまわす(ルビーの色の深いところに、オニキスで
造られた黒い点が律儀に埋め込まれている)。

 あるとき私はこれらのものを見て、点を意識する。そこを通って身体情動が出入りしていない、唯の点。