地軸ナンバー

 地軸という名のマッチ棒が売られている。箱には、地面から光を発しながら回転する
ロケットの絵が描いてあった。手にするだけで、天体そのものの行き方を思い起こさせる
ようで、マッチにしてはとても壮大だった。火薬を含んだ紙帯は、ロケットの上にもある。
それを使ってマッチを擦ると、機体から地軸ナンバーが現れた。
****************************************
 不思議な場所に出る。町の中であるにもかかわらず、ゆっくりと地面とその上の
空気が湿って、揺らいでいる。荒れた岩肌で道が舗装されており、
靴で踏むと石はかたかた揺れる。蜃気楼が一群れ敷石の上に展開されるのだが、
それは車庫で、中にキャデラックが一台停められている。紫の霧に似たメランコ
リックな車(霧そのものかもしれない)。伝染病の流行る前に似た、時間が無理に
ひきのばされているような感じが、そこかしこに溢れている。キャデラックの中
には青白い頬をして髪を高く結い上げた女が一人、リクライニングシートをべったり
と倒して横たわっている。リクライニングシートには星斑があり、光っている。