6/27伝達状態の一定性

 ただのメモ。
 「脳のいかなる過程も連想や思考に対応してはいない。だから脳過程から思考過程を
読み取ることは不可能である、という仮定ほど自然なものはないと私には思われる。私の
いう意味はこうである。私が話したり書いたりする場合、話された思想、或いは書かれた
思想に対応するインパルスの組織が私の脳から出て行くのだ、と私は仮定している。しかし
なぜその組織がさらに中枢に向かって続いていると考えるのか。なぜこの秩序が、いわばカオス
から生じてはならないのか。この事情は次の場合に似ていよう。すなわちある種の植物が種子に
よって繁殖し、種子はつねに、それが生み出されてきたもとの植物と同一種類の植物を生み出す。
しかもその種子の中には、そこから生じる植物に対応するものは何もない。従って種子の性質や
構造から植物の性質・構造を推理することは不可能である。それはただ植物の来歴から推理出来る
だけである。このようにある有機体が、全く無形態のものから、いわば原因なしに生成することは
可能であろう。そしてこのことが我々の思考や、さらには会話やものを書く事にも、実際当てはま
ってはならぬという理由はない。」(ウィトゲンシュタイン「断片」608節)
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 (私はこういう見解を良いなぁと思う。そこには個人の見解と骨がらみで失速していく感覚的な
ものがあまり含まれていない。とはいえ感じること、考える事の全面的な放棄でもない。)