フレア

 フレアが在るときに、昔在った惑星も見える。それは遠くで星としての
 命を終えて空を翳らせたが、小さなフレアの中では、在るように見える。
 在るように見える、というのは在るのと同じことで、やがて厚みを増し
 呼吸を繰り返す、星のかたちをした小さい檻が、乾電池で光る小さな生
 きものの魂を閉じ込めて、長い夜の回廊を滑り落ちていく。

              ♪

 仕事場からの帰り道、みすず書房のことを考えていた(本屋の一画に
絶版本を含めたコーナーがあると、それだけで結構胸がいっぱいになっ
てしまう)。

 「心的外傷と回復」を買ったまま、まだ全部読めていないのだけれど、
 私が考えるのはみすず書房から発行されているフェミニスム関連の本
 と「心的外傷と回復」を、丸ごと現在起こりつつある人権侵害のモード
 の中で書き換えることで、それがプラクティカルに出来れば、下手なスピ
 リチュアリスム本とか自己啓発本より、よっぽど的確な心理的覚醒の記録
 になる気がする。

 というか、<意識>について考えるときに、ヘテロジーは絶対抜かせない
 気がするのだけれど、意識操作の濫用の中でそのことが丸ごと言及不能
 ものとして欠落してしまうのはどうしてなんだろう、と思う。