背丈の高い菫

茎が長くて一見、菫だと思えないばかりか殆んど生け垣のように連なっているので、不思議な気分になる。水気を含んで青い茎を見上げると菫の花弁が幾つも揺れていて、確かに菫、と感じるのだが。
象牙色の布で出来たトルソのワンピース。胸の上からウエストまではきつく巻き上げられた幾層もの麻で出来ていて、ウエストからはふっくらとした綿入れの木綿で出来ている。全体に絹の淡いグラデーションの糸で、いくつものバラの花が埋め込まれるように縫われていて、はじめバラの形だと気付けないものの、近寄るとある一点でバラの質感に釘付けになるのだ。
それで階段から振り仰ぐ天井の細長い空間には、自分が幸福の中で薄目を開けるときの夢の名残がある。たなびくそれの中には、熱くて白いカップの気配があって、中に入っている飲み物はまだ解らない。たぶんコーヒーか砂糖を入れたココアなのだけれど。

(2日前)ベンジャミン バトンを見に行く。感覚的になったときの時間処理が一体どういうものか って未だに考える。見終わってエンドロールを目でなぞっていて、フィッツジェラルドの原作なんだなぁ、とびっくりした。
電車の中で少し「差異と反復」を読む。何を思ってたのか。