1Q84読了

 読み終わる。面白かった。早く続きが読みたい、と思う。
 「証人会」という宗派のモデルになった団体の人と、一時期よく話をしていた
 (私自身は無神論者で、強いてもしひとつ宗派にコミットしなければいけない
としたら、子供の頃通っていた日曜学校的な、ものすごくオーソドックスな
プロテスタントだろう、と思う)。彼女の聖書解釈は、やっぱり何が何だかよく
分からず、しかも輸血をしてもらえない宗教なのにも関わらず、「昨日手首を
切った」と言って腕を見せてくれたことがあった。前出のセミナーがらみの怪しい
会社もそうなのだけれど、おそらく人間の精神の中の可変性を帯びた領域を固定する
ことによって、ある種の新興宗教は永らえている(以前言語の混交性が却って
神秘主義的なモメントを引き寄せる、という説を書いたことがあるけれど、これは
それほど思い込みではないような気がしていて、例えば聖書という、解釈の多様性
を持つテクストを故意に簡略化して語ることで、単純化された外傷的経験をいくつも
束ねることが出来るのだと思う)。
 辛い、と思う。村上春樹の新刊を買った100万人の人が全く信仰を持たない人なのか、
自分に近しい状況とだぶらせてこの話を読んでいるのか、信仰にどっぷりはまっている
人なのかは、私には分からない。けれど、結局可変性を喪った宗教を、もっと自由に
動く発想の領域に浮かべてみて、もう一度全体的な構図の中でその性質を問う、という
作業の必要性を感じていなければ、こういう本がすごく売れる、ということもないような
気がする。読みながらすごく元気が出て、泥沼みたいに滞っていた精神的なものが、また
元の通りゆるく、具体物を目指して流れていくような感覚を味わう。

                    ♪

 仕事関連の資料を集めたりしながら、再度統一教会の大規模な摘発についてのニュースを
読み、嬉しい気持ちになる。