黒いツイードのワンピース

 黒いツイードのワンピースの中に混ざりこんでいる毛束が銀色をしており、
手で触れると何となく熱を感じる。肌の上をブラシで擦ったような痛みと
突然踏み出したとき、足元に広がる分厚い雪の層の心もとなさ。黒い、
ループの毛のそこかしこに、周囲から景色の色が吸い寄せられる気がして
身体を折りたたむ。膝の上に知らないうちに、塊の羽根を握り締めている。

 ポートレイトの隅のほうにいつの間にか、赤いガラスのはまった銀のロケット
が一つ写っていて、ガラスの中に透かし彫りにされている一匹の昆虫が、写真に
向かって動く。鎖状のラインの刻まれた首筋の肌。

                 ♪
 空気環境がとても悪いので喉が痛くなるのだが、なかなか風邪を引いたり咽喉
自体が壊れる気はしない。頭痛いくらい下らないことを思い浮かべる(当たり前の
事なのだが、同一空間に居る人間が犬の糞を口に入れてたらきちがいだと思うし、
今までそういう目に遭ったことはないのだが、何か自傷的に口の中に変なもんを
入れたことを書かずにはすまない人たちが居り、なおかつブログ何となく真似され
ていることがあり、気持ち悪い。女性でそういう性癖の人は実名と性癖が一致する
ようなかたちで晒し上げた方がよいと思うのだが)。
 手帳買わないといけないなと思いながら、本屋を覗くのだが、ほんと糸井重里
手帳みたいなみっともないものを買う人の感覚が解らない。別にナショナリストでは
ないと思うのだが、樋口可南子の顔立ちをのっぺりした韓国系の顔、と表現している
人が居て、確かに整体をしてもらったサロンで雑誌の表紙に載っていた顔立ちが何か
妙な感じに見えたのだった。
Moreskinとかデルフォニクスの手帳が安く買えるのに(大体リーフレット
交換でそこそこの手帳が買えるし、リーフレット自体がどんどん使い勝手もよくなって
いるのに)あんなものに大枚はたくのはよっぽど情報収集しない人のような気がする。
というより、騙されてなければ買わないというか。それが雑貨になると気分悪いなぁ
と思う。すごい罰ゲーム手帳に思えるのと、周囲で使っているのを見たことがない。

             ♪
 ブノワ・マンデルブローが亡くなった、というニュースを見ながら、当然何が何だか
解らないままに読んでいた複雑系の本と、PCで描いてたマンデルブロー曲線の図案
ソフトのことを思い浮かべる。何の意味があったか解らなくても感覚がオープンなこと
やくっきりした色合いの美しさを見て先取りすることが出来た(きれいな科学という
気がしていた)。マンデルブローについて「売り込みの激しい科学者」と形容していた
入門書があった。でも、オプティミスティックで面白い図案が好きになった人も
多かったのだ(Macでひたすら時間をかけて作図していたのを眺めていた)。
 科学者の売込みが激しく、汚穢で、目も当てられないほど文学的センスがなく、品性
が下劣で下劣な品性に対するノーベル章を多重世界のどこかで受賞し、その後人の不快と
殺意と浅ましさを全部背負って取ったその賞を讃えてワーグナーが鳴り響き、すごい
大仰な感じで階段から転がり落ちるという夢を一瞬見る(足元に犬のフン)。